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きっとシャングリラだよ

映画『新宿少年探偵団』少年少女と壁の向こう側【感想2】

残暑厳しい中ですが前回に続きます。

そう、今回はこちら、どん。

 

新宿少年探偵団』 1997年 監督:淵井正文 主演:相葉雅紀

 

※原作未読です。

※前回の『ぼくらの勇気  未満都市』と関連した話をしますが、単品でも大丈夫です。

※ネタバレを含みます。

 

 

ちいさな相葉くんを見に行こうの会って感じで未満都市からこちらへ移ったのですが、いやびっくりしたんだけど、1年で人ってこんなに変わる????相葉くんも潤くんも。なんていうかモリとアキラからがっつり垢抜けてやがる……幕原市民もびっくりのシティボーイやでほんま。一気にアイドルの顔をしている。少年の成長はすごい……

 

と思って見てたら思わぬ深手を負ったというか、いやこれ重くね……?けっこう憂鬱になるシーン多くね……?もうちょっとこう、なんていうかポップなやつやと思ってたよ……いや途中の芝生ピクニックシーンと最後のCan do! Can go!はポップだけども……そこで取り返せると思うなよ!!!!でもいいぞ!!!そういうの大好き!!!!!!というわけでまだ見てない人けどこれを読んでいるという人は部屋と心を明るくして適切な距離を取って見ていただきたいと思います。油断してはいけない。

 

未満都市』も『宿少』も、ジュブナイルものでファンタジー、なのですが、あり方は大きく違っています。未満都市が世界観全体がファンタジーに浸かっている作品だとしたら、宿少は「日常世界の上を通り過ぎていったファンタジーのお話」です。大人が全員死に絶え隔離された非日常の世界に生きる少年少女たちと、日常生活の向こう側に妖しい裏側の世界を垣間見る少年少女たち。そしてこの違いが、とてつもなくしんどい。

 

かたや、出ることを許されない壁の中で、それでも生きるために秩序と正義を探す子供たち。その過程で「大人」の欺瞞や弱さを見つけていく子供たち。

 

かたや、両親は離婚、父親は夜勤で家にいないか寝ているか、学校に行かず不良のレッテルを貼られながら昼夜新宿の街を浮浪する壮助。

親に将来のためと塾へ追いやられ、交友関係にまで口を出されながら、才能を発揮する場所まで隠れて求めなければならない謙太郎。

望まないアイドル活動のために苛められ、人の目に追われ、不仲でもひどく扱われても必死に両親をつなぎとめるために壊れる美香。

のびのびと意見を言えない窮屈さを感じ、親に大好きな武道を奪われている響子。

 

なぁんだ。病原菌も政府の陰謀もなくたって、みんな壁の中にいる子たちじゃん。

 

そんな子供たちがいっとき巡り合って、確かにそこには友情と気づきと成長と救いは生まれた。広い世界の存在も知った。でも、それは大人の作った壁を完全に破壊するには至らないわけですよ。美香の両親がこれから仲良くなるわけでもないし、過食症の治療は続くだろうし、壮助の母親は帰ってこない。逆に大人全員が死に絶えて問題すべてがひっくり返ることだってもちろんない。壮助は自分が探しているものは「使命」だってわかったけれど、それは誰かが与えてくれるものじゃない。少年少女の上をファンタジーは通り過ぎて行き、彼らは戦争を続けなければならない。

本当にここしんどいなってシーンがあるんですけれど、作中で、自分が我慢すれば家族がばらばらにならなくて済むんだ(既に精神も肉体も我慢ができる段階を超えているのに)と言う美香に、壮助が「大人は俺が不良になったのは母親がいないせいだって言う。でもそれは違う。俺はもともとこういうやつだった。だから親の事なんて気にせず好きなようにすればいいんだ」というような話をするシーンがあります。言いたいことはわかる。親のことは気にせず好きに生きろというのは正しいと思う。確かにその言葉は美香を救うでしょう。でも壮助くん、貴方だって救われないといけないんだよ。自分が勝手に今の状態になったんだなんて、自分を諦めるみたいなそんな悲しいことを、周りの大人は言わせてはいけなかったんだよ。

この世界の大人は何してんだよ!!!!!!!(机バンバン)

 

いやもーう、ね。中学生の頃に見ることができていたら、主人公たちの不遇もスパイスに不思議な謎の美少年との邂逅や秘密の通信、街に残された暗号に心を躍らせることができたんでしょうけれども。残念ながら私はもう守るもののなかった子どもじゃない、大人になってしまったので、なんかもう、この子たちの痛々しさとそれを許しているこの世界へのやるせなさに目を向けずにはいられなくなってしまいました。

願わくは、この4人が壁の向こう側へ行ける日がきますように。

 

 

暗い話になってしまったので、明るい話をします。相葉雅紀松本潤の可愛らしさ&幸薄そう感すごい(明るい話なのか?)なんていうかこう、この2人ってタイプは全然違うのに2人とも「ホラー映画に出てくる美少年顔」してません?違ったタイプの。なんでだろう。こんなにきちんとしたご家庭できちんと健康的に育ったお子たちなのに。

あと隠せない泣き虫さんチームクラスタなのでガムのシーンはいまだにどういう顔をして見ればいいのかわからないし、蘇芳くん(しっかしまぁ横山くんは顔がきれい、そして今とほんとに同じ顔をしているのでびっくりしました)の手を握り締める壮助くんはだいたいマリア様でした。ありがとうございました。魔力供給?!?!と騒いだのは内緒です。

それから、親に反対されてでも親友でいようとした壮助くんと謙太郎くんが、この物語の後もいつまでも友達であることを願わずにはいられないこの物語ですが、20年後の世界にアイドルになった2人が隣に並んでいるということ、それが一つの回答として用意されていることに心の底から感謝したい。これもまたひとつのスタンド・バイ・ミー。ありがとう世界。

 

 

 長々ご清聴ありがとうございました。またよろしくお願いいたします。

 

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